富士山の伏流水 条例で守る

山梨名水百選の一つ、「忍野八海」で知られる富士山北麓の山梨県忍野村が10月、ミネラルウオーターなどを販売する目的で地下水をくみ上げる井戸の新設規制に乗り出した。村外に水を持ち出せないように条例を強化し、「富士山」ブランドを求め進出するミネラルウオーター業者に対して、小さな村が対抗策を打ち出した。
村は2003年に地下水資源保護条例を施工し、井戸の新設を許可制にした。ただ、「地下水の合理的な利用に支障がないこと」など許可基準があいまいで、村外への水の持ち出しは規制されていなかった。今回の改正条例では、くみ上げた地下水は村内の水系に戻すことを定めた。これにより、村外での販売を目的とした井戸の新設は規制される。
村の地下水は大半が富士山からの伏流水。村内では、20年以上前から飲料水を製造する工場が稼働し、07年にはオフィス向けのウオーターサーバー製造会社も井戸を掘って操業を始め、1か月で約230キロ・リットルを取水している。これ以外にも、06年頃からは、ミネラルウオーター工場建設を打診する問い合わせが毎年3040件寄せられている。
村の天野茂満・保健衛生課長は「村民が使っている水はすべて地下水。村民の生活に影響が出てからでは手遅れになる」と、規制の理由を説明する。
日本ミネラルウオーター協会(東京都新宿区)の統計によると、ミネラルウオーターの2010年の国内生産量は約210万キロ・リットルで4年前より16.5%増えた。しかも、全体量の約3割が山梨県に集中する。
地下水に関する法律は、地盤沈下や水質汚濁を防ぐのが主な目的で、水資源の保護は対象外になっている。自治体が地下水の枯渇を防ぐためには、条例を作るしかない。忍野村の条例改正後、村には全国から問い合わせが相次いでいる。同村に近い富士河口湖町は「地下水の保全をもっと強化する条例改正も含め、今後検討したい」としている。人口9000人余の小さな村が投じた一石が注目を集めている。
    2011.11.18 読売新聞朝刊 列島細見 甲府支局 佐々木想 転載

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